環境イベントでの講演 骨子
2024年6月1日(土)と2日(日)の二日間、名古屋の久屋大通り公園で行われた環境イベント『みらいLaBo』で講演をさせていただきました。
環境イベントでの講演だったので、SDGsとSurvival と題してお話しをさせていただきました。お話しの内容は、以下の通りです。
持続可能な開発目標
SDGsとは、日本語では『持続可能な開発目標』と訳されます。
では、その目的とは、あらゆる生命が安全で安心して暮らせる地球を作るということです。
SDGsのターゲットの中には、『災害』というキーワードが12か所に使われていますが、中でも
- 11.5で『災害による死者数、被害者数、直接的経済損失を減らす。
2030 年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
とあります。
つまり『持続可能』とは、『命が持続可能』ということであり、SDGsの目標を達成するためには、先ずは災害対策に取り組むことが必要だということです。
人が自分の命を守り、その守った命を繋げ、そして自分の子供たちにより良い未来を残していくために必要なことをする、それが私たち個人として参画できるSDGsではないでしょうか。
人が生きていくために必要な物
それでは、人が生きていくために必要な物をちょっと考えてみたいと思います。
「無人島に1つだけ持っていけるとしたら、何を持っていきますか?」
みなさん、どうですか? 何を持っていきますか?
昨年の夏、日本トレンドリサーチという会社が、こういうアンケートを全国男女1000人に取りました。
その結果は、次の通りです。
1位 ナイフ・包丁
2位 テント(タープを含む)
3位 寝袋
私だったら、色々持っていきたいものがありますが、イの一番にあげるとすれば、ビニール袋かな。
それではみなさん
「人が生きていくために必要な物を5つ挙げてください。」
重要な順番にあげると、次のようになります。
①空気の確保
②体温の保持
③水の確保
④火の確保
⑤食料の確保
サバイバル3の法則
上記の①~⑤にはサバイバル3の法則があります。
1.空気は3分間途絶えると死に至り、体温は3時間保てないと死んでしまいます。
2.水は3日間途絶えると生存することは難しく、食料は3週間食べられないと死んでしまいます。
3.火については、時間の概念がないので、3つの効用・・・灯り、暖を取る、調理をすることができます。
ビニール袋の活用方法
さて、無人島には「ビニール袋を持っていく」と申し上げましたが、ビニール袋の活用方法について、お話ししましょう。
①火災時の避難 → 空気の確保
サバイバル3の法則で、第一番目が『空気』でしたね。
空気が無い環境・・・そんなことが起きたら人類皆滅亡でしょうか?
実は、身近に空気が無くなってしまうことが起きる場合があります。それは火災です。
京都で大きな火災が発生し多くの方々が亡くなられたことは、皆さん記憶に新しいことと思いますが、ビニール袋の活用法をご存じであれば、あるいは命を繋ぐことができたかもしれません。
空気の中には、21%の酸素が含まれています。そいて吐く息の中には、16%の酸素が残っています。21%の酸素を吸って、5%しか体内に取り入れていないんですね。
さらに、人間の生存限界の酸素濃度は16%から18%といわれています。
とすれば、ビニール袋を被ったからといって、すぐに窒息してしまうことはありません。
火災の時に何が怖いかというと、一酸化炭素などの有毒ガスですが、ビニール袋を被ることによって、有毒ガスを吸ってしまう危険を回避して避難することが可能となります。
②ベストを作る → 体温の保持
さて、サバイバル3の法則の二番目は体温の保持でした。山で遭難した時に一番怖いのは、低体温症です。
そこで、ビニール袋を利用して、ベストを作ってみましょう。
ビニール袋の底に頭を出す穴をあけ、横に手を出す穴を開けるだけです。どうですか、簡単でしょう?
③ハサミ等が必要になりますが、こんなポンチョを作ることもできます。
④地面や床に敷くシートにすると体温を地面や床に奪われることを防ぐことが可能となります。
⑤ポリタンクが無い時の水のストック → 水の確保
サバイバル3の法則の三番目が「水」でした。いざ大災害が発生すると生活インフラが断絶してしまいますが、命にかかわるのが水です。
皆さんのご自宅にポリタンクを常備しているご家庭はありますか?
ポリタンクが無い時に、ビニール袋に直接水を入れてしまうと、重たくて運び辛く取り扱いが難しくなってしまいます。そんな時に、段ボール箱に入れて使うことによって、扱いやすくなります。
⑥懐中電灯の上に水を入れて置き、光を拡散させる → 火の確保
サバイバル3の法則の四番目が「火」でした。懐中電灯があると便利ですが、光があまり拡散しないので、局所的に明るくなるだけです。
そこで、懐中電灯の上に水をいれたビニール袋を置くと・・・光が拡散されて、全体が明るくなります。
⑦避難所で自分の持ち物をひとまとめにする → その他
⑧濡れてはいけない着替えやスマホ、貴重品などをしまっておく → その他
⑨大きな枝や木とロープを利用して雨露をしのぐシェルターを作るく → その他
また空気を入れて膨らませた袋をいくつも繋いでシェルターを作ることもできます。
防災力
さて、最後になりますが、「防災力」とは、どのような能力なのかを説明しましょう。
◆災害発生までは想像力
◆災害発生後はサバイバル力
サバイバル力とは、まさに守った命を被災後につなげていく力であることは、既にご説明したとおりです。
想像力
想像力とは、
1 正しい知識に基づいて
2 発想力
3 想像力
4 創造力
この3つがキーワードとなります。
1.例えば、富士山が噴火するということを思いつくことが発想力
2.そして富士山が噴火したらどのような事態になるかを考える力が想像力
3.さらに名古屋に灰が降ってくると想像したら、それに対してどのような対策をとればよいのかを考える力が創造力です。
このたとえを聞いて、「ん?」と思われた方は、正しい知識を持っている方です。
日本上空には偏西風が吹いているので、まず富士山から西に170km近く離れた名古屋に灰が降ることはないでしょう。
つまり、正しい知識がなければ、正しい発想ができません。
4.そのためには、
→話しを聞く、過去の歴史に学ぶ、体験する・・・ということが重要です。
増えている地震
さて皆さん、最後になりましたが、非常に地震が増えているとお感じになりませんか?
以前に比べて、「最近地震が多いなぁ・・・」と感じている人は少なくないと思います。まずは次の表をご覧ください。
次表は、1920年代以降、10年毎に震度5弱以上の地震を気象庁の地震震度データベースから数えたものです。
2000年以降、日本における震度5弱以上の地震は、異常なまでの増加を示しており、今や日本列島全体が地震の活動期に入っていると言って過言ではありません。
1900年代…1920年から、2000年まで10年ごとに日本国内で発生した震度5以上の地震を数えると、4回から58回・・・これは関東大震災のあった1920年代に記録されたものです。
ところが、21世紀に入った2000年代の最初の10年間は、129回
そして2010年代は、184回にも及んでいます。まさに地震が増えていることは、この数字を見れば明らかです。
この中でローリングストック・・・循環備蓄をしている方はいらっしゃいますか?
能登地震後の2024年4月2日にリサーチパネルという調査会社が「ローリングストックしていますか?」というアンケート調査を実施しています。
回答総数 59,036件の回答は次の通りです。
している 17.6%
していたことがある 8.9%
したことはない 62.5%
この中にはない 11.0%
能登地震の被災状況が広く伝わった4月でさえ、ローリングストックを実施していない人が6割以上いるとう現実に、皆様驚かされませんでしたか。
災害大国である日本が、明治維新以降、近くは第二次世界大戦以降世界史に類例のない発展を遂げてきたのは、行政が積極的に災害対策に取り組んできた結果です。
その結果日本人の気質として、「平和と安全はタダで手に入る」、「自分の身は行政が守ってくれる」という風潮が根付いてしまいました。
世界に目を向けると、各地で自然災害ばかりか紛争が頻発し「自分の身は自分で守る」ということが当たり前の世界になっています。
また、阪神淡路大震災から29年、壊滅的な損害を受けた豊中市在住の方々向け研修や、姫路で被災した中堅企業の幹部社員研修をやらせていただいたことがありますが、参加した皆様の防災意識は、他の地域の方々と大差ありません。
そこで皆様には、ぜひ備えない防災をしていただきたいと思います。普段の日常生活を少しづつ見直して、災害に備える日常生活を送っていただきたいということです。
例えば、特別な非常食を用意しなくても、日常の食生活の中で保存の効くものを用意して普段から使用しながら補充していく・・・ということです。
この点をさらに具体的に説明すると時間がかかるので、また次回にということで、今日のお話しは終わりたいと思います。
この講演で使用した資料は、以下のリンクにアップしてありますので、よろしければご覧ください。