たかが熱中症、されど熱中症 + 経口補水液の作り方
毎年この季節になると、多くの方が熱中症で救急搬送されたというニュースが増え、亡くなる方も少なくありません。厚生労働省が発表した2022年度の熱中症によって亡くなる方は1,477人にも及んでいます。年代別にみると、30歳を境に高齢になるほど多くなっています。そこで熱中症に対する正しい知識と予防法を解説していきたいと思います。
今年は例年にも増して、熱中症が増えるものと考えられています。言うまでもなく、新型コロナウイルスに対する「新しい生活様式」により、マスクを着ける機会が多いからです。
出展:厚生労働省 年齢(5歳階級)別にみた熱中症による死亡数の年次推移(平成7年~令和4年) 人口動態統計(確定数)より
◆熱中症とは?
まず「人が生きていくために必要な5つ」の要素は、
1)空気
2)体温の保持
3)水の確保
4)火の確保
5)食料の確保
でした。
そのうちの『(2)の体温の保持』ができず、体温が低くなると低体温症に、高くなると熱中症になります。熱中症の予防には、『(3)水の確保』が重要となります。
熱中症とは、高温多湿な環境の中で、水分、塩分やミネラル分(カリウム(細胞内の水分を調整)、マグネシウム(糖分をエネルギーに変換するときに必要なもの))などが不足して、体温調節機能が働かなくなり発症する障害の総称です。
熱が体内にこもると、次のような症状が現れます。(日本救急医学会分類2015)
◎重症度Ⅰ:めまい(立ちくらみ)、失神=熱失神/筋肉痛、筋肉の痙攣(手足が攣るなど)=熱痙攣/その他手足の痺れ、不快感。
◎重症度Ⅱ:頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感=熱疲労。
◎重症度Ⅲ:意識障害、痙攣、手足の運動障害、高体温など=熱射病。
熱中症はある意味、病気というよりは100%防ぐことのできる『災害』です。甘く見ると死にも至る重篤な災害となります。
◆熱中症のリスクを増やす環境要因
1)気温(高温):気温が高くなると、身体に熱がこもりやすくなる。
2)湿度(多湿):湿度が高くなると、汗が蒸発しづらくなる。
3)日射し・輻射熱:日射しが強かったり、輻射熱が強いと身体に熱がこもりやすくなる。
4)風(気流が無い):風がなかったり弱かったりすると、汗が蒸発しづらくなる。
◆熱中症リスクを増やす健康要因
1)糖尿病、高血圧、心疾患、慢性腎不全、皮膚疾患などに罹患していたり、自律神経に影響のある薬の服用により、リスクが増える。
2)風邪・発熱、下痢・嘔吐、過度な飲酒・二日酔いなどによる脱水症状。
3)朝食の未摂取による水分・塩分不足。
4)睡眠不足による体温維持能力の低下。
◆熱中症予防
1)暑熱順化(暑さに慣れる):2~3日で自律神経が変化し、少しの熱でも体温を下げようと皮膚の血管が拡張して、発汗反応が活発になる。/4~5日で汗に含まれる塩分やミネラル分が少なくなってさらさらの汗になり、汗が蒸発しやすくなる。
2)体調を整える:アウトドアでは帽子をかぶり、直射日光を避けます。行動するときは、こまめな休憩と水分補給を心掛けましょう。また、寝不足や二日酔いの状態での活動は、熱中症になろうとしているようなものです。通気性の高い服を着ることも効果的です。
3)水分補給:自分の身体の状態を良く知ることが大切です。実は、おしっこは身体の水分が足りているかどうかのバロメーターなんです。水分が足りない度合いに応じて、おしっこの色が濃くなっていきます。普段の色を観察して、少しでも濃くなったと感じたら、水分補給しましょう。/水分補給の方法は、こまめに少しづつ(コップ一杯程度の水や経口補水液を30分~1時間間隔で)飲むことが大切。水を一度に大量に飲むと、血液の濃度が薄くなり、身体は濃度を保とうとして飲んだ水を汗や尿として排出しようとするので逆効果です。/水分補給に適した飲み物は、経口補水液です。市販のものもありますが、簡単に自分で作ることもできます。
<経口補水液のレシピ>
用意するものは、
1)500mlのペットボトル。
2)砂糖 フタに3杯=20g
※マクドナルドのスティックシュガーなら 1本3g×7本
または、蜂蜜をペットボトルのフタ3杯。
※砂糖の代わりにはちみつを使うと、すぐにエネルギーになってくれて、蜂蜜の主成分のブドウ糖は疲労回復にも役立ちます。
3)塩 1.5g (プリンに付属の透明なスプーンに1杯程度)
4)あればクエン酸塩 1.5g (レモン果汁だったらフタ1杯=7.5ml/大さじ1/2)
※クエン酸にはエネルギーを生み出し、疲労物質を除去する働きがあるので、疲労感を軽減し、回復を早める効果があります。
以上のものを入れたら、水道水をペットボトルいっぱいに入れて蓋をしたら、よく振るだけ! どうです、簡単でしょう。
<経口補水液以外は何がオススメ?/何がNG?>
経口補水液を作るほどでなければ、水やミネラルウォーターがお勧めです。
お茶やコーヒーなどカフェイン入りの飲みや、アルコールには利尿作用があると言われていて、飲んだ以上に水分が排出されてしまうので、お勧めできません。
もしお茶が飲みたいということであれば、麦茶かカフェインレスの飲み物を選びましょう。
映画や小説で、海上で遭難して飲料水が無い場合、海水を飲んだり、自分の尿を飲んだりする場面が出てきます。これらは塩分濃度が高いため、体内に入ると身体が余分な塩分を排出しようとして、飲んだ以上の水分を排出してしまい、脱水症状が進行してしまいます。
<きれいな飲料水を!>
脱水症状というと、サバイバル時に絶対避けたいのは、下痢と嘔吐!矢口史靖監督作品、映画「サバイバルファミリー」で、父親役の小日向文世さんが川の水をがぶ飲みして、下痢と嘔吐にみまわれるシーンがありました。これらの症状は、脱水症状に直結し非常に危険な状態となります。飲料水は、次の条件を満たしたものでなければなりません。
①無色透明
②無味無臭
③細菌やウイルスなど有害物質が含まれていないこと
◆熱中症にかかったら
1)重症度Ⅰの場合:
木陰やクーラーの効いた車内・屋内に寝かせて水分・塩分(経口補水液)を少しづつ飲ませて様子を見る。自力で飲めない、あるいは症状の改善が見られなければ病院へ搬送する。
2)重症度Ⅱの場合:
「重症度Ⅰ」の処置に加えて衣服を緩め、5つの首(首、両手足の首)、わきの下などを冷やす。自力で飲めない、あるいは症状の改善が見られなければ病院へ搬送する。
3)重症度Ⅲの場合:
すぐに119番に電話、救急搬送する。
尚、熱中症に限らず、『嘔吐』『高熱』『意識混濁』の3つの症状がでたら、迷わず119番に電話、救急搬送しなければなりません。
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